根管治療において根管内部の清掃にはファイルやリーマーと呼ばれる、先の尖った針のような器具を使用します。
これらの器具はステンレスやニッケルチタンといった金属を加工して作られていますが、治療の際に金属に力が加わり変形や疲労を起こして根管内に折れ込んでしまうことがあります。
器具破折が起こる頻度は使用される器具の種類のもよりますが0.25〜2.4%程度と報告がされています。
さて、器具破折を起こした場合には予後に影響があるのでしょうか?結論ですが、折れた器具自体が治療後に症状や病状を引きおこすことはありません。破折した器具自身が予後に影響を与えるのではなく、器具が折れ込んだことで根管内部が十分に清掃をできず、多数の細菌が残ってしまうことが予後に影響を与えます。
そのような場合には器具の除去を試みることになりますが、十分に根管の清掃が終了した後に器具破折が起こってしまった場合や、もともと根管内が生活歯髄であり細菌の感染がないような場合などには、器具の除去は必須ではありません。
また、器具を除去するためにはある程度の歯質の切削を伴うことや、外科処置が必要となる場合もあります。
ですから、器具破折が生じた状況で必要があれば器具の除去を試みますが、除去を行う事が必須ではない場合や、除去をする行為自体に高いリスクがあるようであれば、除去は行わずに経過観察を行います。
器具破折は起きないことが患者と術者双方にとって心情的にも望ましいのですが、起こった場合にも適切に説明を行い双方の認識を一致させていくことが以降の治療にとって大事なのではないかと考えます。