前回の記事(歯髄保存療法|いちかわデンタルオフィスの根管治療の考え方)では歯髄は可能な限り保存した方が歯の寿命を考えると有利であるという話を書きました。実際の臨床では歯髄が元に戻る状態(可逆性歯髄炎)と元に戻らない状態(不可逆性歯髄炎)を診断していくことが大切になります。不可逆性歯髄炎の症例では歯髄保存療法は適応になりません。治療後の歯髄炎、根尖性歯周炎、歯髄壊死などになり根管治療が必要となります。
①温いもの熱いものがしみる ②何もしなくても痛みがある ③冷たいもの熱いもので痛みが数分程度持続する
これらの症状は歯髄が不可逆に侵襲をうけているというサインになるため、一般的には根管治療の適応となります。
①髄腔内からの多量の出血及び止血が困難な状態 ②髄腔内に健康な結合組織が認められない
実際に治療をする際に歯髄の状態を観察することが大切です。これらは歯髄の炎症や、壊死を示すため根管治療の適応となります。
まずは問診、診査により炎症の状況を確認し診断を行います。歯髄保存療法が可能であれば顕微鏡およびラバーダム防湿を行い歯髄保存のための治療に入ります。予後が不明瞭な場合はよく説明をした上で、術中あるいは術後に根管治療が必要になる旨を説明します。歯髄の診査は歯髄保存療法において大事ですが、年齢や歯の状態によっては診査が困難であったり診査結果が組織の実際の状態と一致しない場合などがあります。ですから予後に関しての事前の説明を十分に説明しご理解を頂くことが治療を行ううえで重要となります。また、これらの治療は根管治療にたいする知識や設備を備えた歯科医師、歯科医院での治療が望ましいと考えております。